焦点: カジノ法案が瀬戸際に、ウルトラC案も浮上

カジノを含む統合型リゾート(IR)の運営を解禁するための法案(IR推進法案)が、瀬戸際に立たされている。IRを推進する議員連盟は、法案の付託先をこれまでの内閣委員会からほかの委員会も視野に検討し、可決・成立を目指すが、審議入りの時期は未定。

通常国会の会期が延長されても審議時間が不足し、成立しない可能性があり、日本の「決められない政治」を印象づけるリスクが再び浮上しかねない。

自民党、維新の党、次世代の党は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(通称IR推進法案)」を共同提出する段取りを整えた。これから注目される課題は、1)法案をどの委員会に付託するか、2)公明党との意見調整、3)付託の時期──の3点となる。
 

<国交委というウルトラC>

IR推進法案の付託先は従来、同法案が議員立法であるため、過去の慣例から内閣委員会としてきた。しかし、主任大臣が内閣総理大臣となっているため「与党内で合意ができ、他からも理解を得られたらどこでもいい」(岩屋毅IR議連幹事長)と柔軟性のある対応も検討されている。

そこで、多くの審議時間を必要とする内閣提出の法案が数多く付託されている内閣委員会よりも、国土交通委員会など他の委員会に付託した方が、迅速な審議を可能にするとのアイデアが浮上している。

国交委に提出済みの法案は、審議時間が比較的短くても成立の見込めるものが多く、複数の国会筋は「(内閣委より)審議時間を確保しやすい」と期待が高まっているためだ。
 

<公明党がネック>

ただ、国交委に提出できるとも限らない。国土交通省から提案される法案を審議する同委員会では、同省の意向が審議の行方に大きな影響を与える。そのトップである国土交通相は、公明党の太田昭宏・衆院議員だ。

公明党は、カジノを含むIR合法化に消極的なスタンスを示してきた。ただ、法案提出前に、与党内の意見を調整する必要がある。IR議連の岩屋毅幹事長(自民)は「与党内で認識をしっかり共有しないといけない」と述べ、来年度予算案の成立にめどがつき次第、公明党とIR法案に関する意見調整を行う方針だ。

公明党内には、同法案をめぐってさまざまな意見が混在しており、党内の意見集約が短時間で終わらない可能性もある。だが、調整に時間がかかると、同法案の国会提出時期は、通常国会の会期末ぎりぎりになることも予想される。

業界関係者やIR推進派は、会期が延長されても審議時間が足りなくなり、今国会で成立しない展開もあり得るとし、次第に懸念を強めている。
 

<法案の提出時期も不透明>

仮に付託する委員会が決まっても、当初3月上旬と予想されていた法案提出のタイミングは、最優先の予算審議が政治とカネの問題などで約2週間遅れ、そのあおりでかなり遅れそうな展開になってきた。

今年は4年に1度の統一地方選挙が4月に控え、さらに審議日程を窮屈にしている。

十分な審議時間を確保するためには、統一地方選よりも前に法案を提出し、選挙の後に審議入りするのが理想的。

しかし、選挙前の提出では、ギャンブル依存などの社会問題が争点に浮上しかねず、与党内の調整の妨げになることも予想される。IR議連にとっては、このタイミングでカジノに慎重な陣営の反発は避けたいところで、早々に国会上程するのも得策ではないとの意見が多い。

統一地方選後の法案提出でも、今国会での可決成立に「十分間に合う」と岩屋氏は読んでいるが、提出時期が遅れれば遅れるほど、時間とのたたかいになる。
 

<モメンタムはどこへ>

カジノ運営をめぐっては、経済活性化の目玉として合法化を推す声が高まり、第2次安倍晋三政権下でIR推進法案が提出された。安倍首相が2014年5月にシンガポールのカジノを視察した際は、IRが日本の成長の柱になると前向きな姿勢を示し、法案可決への機運が高まった。(※モメンタム(momentum):方向性や勢いという意味)

しかし、たび重なる審議の遅れで成立にいたらず、昨年秋の衆院解散を受け廃案になっていた。

こうした事態に、海外のカジノ運営会社はしびれを切らしている。MGMリゾーツ・インターナショナル(MGM.N: 株価, 企業情報, レポート)のビル・ホーンバックル社長は、今年2月の都内の会見で、何年も実現しないままの日本のIR合法化に向けた動きを「慎重に見守る」としながらも「永遠には待てない」と発言。「(IRは)この国にとって重要だというリーダーシップが必要だ」と述べた。

「モメンタムはもう去った」(ゲーミング担当アナリスト)との認識も、少数派ではない。

岩屋幹事長は、現状について「議連として大変危機感を持っている」と焦りをにじませる。

IRの関係者は、5年後の東京オリンピックまでに国内でカジノを開業するのは、物理的、時間的に不可能とみる。

しかし、岩屋氏は「どこかの施設が五輪までに開業し間に合うことが、五輪後の吸引力をキープすることにつながる。そこから逆算すると、あまりモタモタできない」と、2020年を開業のターゲットとする旗を降ろすつもりはないようだ。(ロイター:江本恵美氏、安藤律子氏 編集:田巻一彦氏)
 




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