大阪IR建設候補地の地盤沈下対策費は「未定」、公費支出は違法との指摘も

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大阪府・市が国へ区域認定申請を行っているIRをめぐり、建設予定地である夢洲の地盤改良が問題となっています。

松井一郎大阪市長は、国から地盤に関する対応策の説明を求められていることを明らかにしていますが、夢洲の現状や対策費用の内訳などに関する問題点をまとめました。

IR建設予定地となる大阪市此花区の夢洲は建設土砂等を利用して埋め立てられた人口島で、2025年の大阪万博の会場にも決定しています。

しかし、夢洲の浚渫土砂からは基準値を遥かに超える値の有害物質が検出されているほか、長期的な地盤沈下や液状化のリスクも指摘されています。

これらの対策にかかる費用の内訳は、土壌汚染対策が360億円、液状化対策が410億円、地中埋設物の撤去が20億円とされており、大阪市は合計790億円に上るこの費用を公費で負担するとしています。

地盤沈下に関しては、複雑かつ高難易度の技術検討が必要なうえに技術的にも未知であるため、かかる費用は未定。

大阪IR事業者である「大阪IR株式会社」は市に敷地全体の地盤改良を求めていますが、市の負担額上限は設定されていないことなどから、今後も多額の追加費用が公費より支出される可能性が懸念されています。

これまで夢洲で売却した物流用地では売却後に発生した問題について市は責任を負わず、液状化対策などは事業者が担う契約となっていたため、今回、市が費用負担をすることについては市役所内でも議論が行われました。

松井市長は「大阪市としてIR誘致を決定した以上、施設が成り立つ土地を提供することが土地所有者である市の責務」と主張。

大阪港湾局も当初は「公平性が保てない」と難色を示していましたが、結果的に「IR事業用地としての適正確保の観点から必要となる合理的な対策について、土地所有者として必要な負担を行う」と方針を決定しました。

現時点で約800億円とされる膨大な費用は、市の特別会計のひとつである港営事業会計で市債を発行し、IR事業者からの年間25億円の賃貸料と土地売却代などで返済する計画です。

市は「IR誘致に税金は一切使わない」という基本方針を定めていることから、土地対策費用は税収が中心となる一般会計でなく、特別会計から支出することを強調。

しかし、事業者との契約に市の負担額の上限や市の免責について記載がなく、地盤沈下対策が費用に含まれていないことなどから「市が公費から底なしの費用負担をすることは地方財政法などに違反する」として、2022年7月に市民ら5人が事業者との定期借地契約の差し止めを求めて市を提訴しています。

現在、大阪市は国からの求めに応じ地盤問題ついての協議を行っているため、今後発表される解決手段や時期、対応策などについては注視が必要です。

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