どうなる夢洲地盤問題 大阪カジノIR 国審査でも指摘

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大阪府と大阪市が誘致を進めるカジノを含む総合型リゾート施設(IR)の認可を巡り、建設予定地である大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)の地盤の問題が浮上している。府と長崎県が4月にIRの区域整備計画を申請しており、現在、国の有識者委員会が審査中だ。松井一郎市長は11月14日、審査の状況に関して「地盤について問題点が指摘されているのできちんと説明したい」と話し、国から説明を求められていることを明らかにした。これまでも大阪湾の埋め立て地である夢洲は液状化や土壌汚染、地盤沈下の問題が指摘されてきた。大阪市はすでに土地改良工事費で790億円という巨額の支出を決めているが、これ以上膨張することはないのか。安全性に問題はないのか。問題点を点検する。

大阪府・市が対策を必要としている夢洲の地盤の課題と費用は土壌汚染対策(360億円)、液状化対策(410億円)、地中埋設物の撤去(20億円)、地盤沈下対策(未定)と、地盤沈下対策を含まずに790億円に上る。夢洲の地盤沈下は通常は沈下せずに支持基盤となる洪積層が沈下しているために、液状化との複合的な影響について「技術的にも未知」(IR事業者)との指摘があり、費用の上限が見えない。

裁判後の集会で思いを述べる山田氏(中央)

■税金投入の可能性

土地改良にかかる膨大な費用は大阪市の特別会計の一つ港営事業会計で市債を発行し、IR事業者からの年間25億円の賃貸料と土地売却代などで返済する方針。35年の事業期間で875億円の賃貸料収入を見込むが、事業者の撤退リスクがある。市は「IR、カジノに税金は一切使いません」という基本方針との整合性について、税収が中心となる一般会計でなく、特別会計からの支出であることを強調するが、「港営事業会計の状況に応じて一般会計で支援する」ことが想定されている。

「財政を勉強してきたものとして黙っていられない」と憤るのは山田明・名古屋市立大名誉教授(地方行財政)。山田氏を含む市民5人は7月、市とIR事業者との間で結ぶ土地の定期借地権設定の契約の差し止めなどを求めて提訴した。山田氏は10月に大阪地裁で「土壌が汚染され、高層建築物などを想定していない、きわめて軟弱な地盤の大阪湾の埋め立て地・夢洲にIRカジノ施設を計画し、大阪市が底なしの財政負担することの違法性を問う」と裁判の意義を意見陳述している。

大阪市の土地改良費の負担については「(現在の負担額が)上限となっておらず、大阪市の免責について記載がない。地盤沈下対策は夢洲特有の軟弱地盤から巨額のコストがかかると思われるが対策費には含まれていない。土地所有者としての大阪市の責任は、青天井にならざるを得ない」と指摘する。

■市に地盤改良要望

地盤沈下対策についてIR事業者はどう考えているのか。3月の大阪市議会に参考人として招致された事業者は、将来的な地盤沈下による大阪市の追加対策の必要性について「IR事業用地は現在も沈下が継続し、長期的に特有の地盤沈下が認められている。過去の沈下計測のデータが不足しており、今後の調査結果により、課題が出てきた場合は対応を見極める必要がある」と回答。

地震で引き起こされる液状化の対策についても、軟弱地盤が悪影響を及ぼす。市と事業者の協議では「夢洲での大規模開発は、支持基盤(洪積層)が長期に沈下する極めてまれな地盤条件下での施設建設となるため、地盤沈下対策だけで複雑かつ高難易度の技術検討や建物の安全性確保に多額の対応費用の必要性が生じている。さらに液状化が生じた場合の建物への影響は技術的にも未知であり、地盤沈下・液状化の複合影響を建物構造側で抑止・抑制する方法(杭補強等)だけでは、確実な安全性担保はできない」とし、大阪市に敷地全体の地盤改良を求めている。

■公平性保てず

液状化対策には別の問題もあり、大阪市が費用負担することについては市役所内で議論があった。これまでに夢洲で売却した物流用地では、売却後に発生した問題について市は責任を負わない契約で、液状化対策などは事業者が担うスキームになっている。

松井一郎市長はIR用地の液状化対策を市が負担することに対し、「大阪市としてIR誘致を決定した以上、施設が成り立つ土地を提供することが市の責務」と主張。大阪港湾局は「土地所有者の責任として液状化対策を負担すると公平性が保てない」と難色を示したが、「大阪臨海部のまちづくり、夢洲の国際観光拠点形成に資する中核施設として誘致を図るもの」といった理由で「IR事業用地としての適正確保の観点から必要となる合理的な対策について、土地所有者として必要な負担を行う」方針が決まった。

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