米カジノ論争、バーの「スロット」は賭博か

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米カジノ論争、バーの「スロット」は賭博か

バーやコンビニで増える機器、カジノ業界は違法と主張

ゲーム開発者は、スロットマシンによるギャンブルとは異なり、これらのゲームでは賞金を勝ち取るためにプレーヤーはスキルを使う必要があると言う

PHOTO: KEITH SRAKOCIC/ASSOCIATED PRESS

 米国のカジノ業界は、ある種のビデオゲームについて、ギャンブルと見なすべきだと主張するキャンペーンを展開している。

いくつかの州では、ラスベガス式のスロットマシンに似たビデオゲーム機が、バーやコンビニエンスストア、社交クラブに進出している。ゲーム開発者は、スロットマシンによるギャンブルとは異なり、これらのゲームでは賞金を勝ち取るためにプレーヤーはスキルを使う必要があると言う。

一方、カジノ業界のロビイストたちは、このゲームはギャンブルだと言う。スロットマシンをギャンブルの規制の外で運営し、税金を逃れようとする見え透いた試みだという。

カジノ業界団体の米ゲーミング協会(AGA)が最近発表した報告書によると、規制されていないゲーム機に米国人が使う金額は毎年1090億ドル(約14兆6000億円)で、運営者は270億ドル近い収入を得ていると推定される。同協会は今年初め、司法省に対し、これらのゲームを精査し、連邦法に基づいて賭博機器として登録を義務付けるよう求めた。

 司法省はこれを受け、賭博に絡む違法行為は優先度が高く、情報を連邦捜査局(FBI)に伝えたと、AGA宛ての書簡の中で回答している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこの書簡を確認した。

ギャンブルは米国人の生活に広く浸透しつつある。各州がカジノを新設し、オンラインのスポーツ賭博やデジタル・カジノが合法化され、人々の家庭やスマートフォンに賭博が持ち込まれるようになった。

一方、バーチャル(仮想)の賞金を提供するモバイルゲームはギャンブルとゲームの境界を曖昧にし、国外のギャンブルサイトは依然として米国の消費者から違法な賭け金を受け取っている。

近年、オンライン賭博が拡大したとはいえ、多くのカジノ会社は収益をスロットマシンに頼っているのが現状だ。AGAによると、先住民族のカジノを除いた商業ギャンブル業界の昨年の収益は約530億ドルで、そのうちスロットマシンからの収益は約330億ドルだ。

賞金を稼ぐためにはスキルが必要だとされるマシンは、現代のビデオスロットゲームのように見えるものが多い。画面には回転する正方形のグリッドが表示され、海賊や宝石をモチーフにしたアイコンをタップしてそろえる。このゲームは、ゲーム開発会社と事業主が収益シェア契約を結び、店舗やバーに設置されている。

こうしたゲームを開発している代表的な会社の一つがペース・オー・マチックだ。ジョージア州に本社を置く同社は自社のゲームについて、偶然性だけで成り立っているスロットマシンとは異なり、プレーヤーは勝つために三目並べゲームのようなやりとりが必要だと話す。熟練したプレーヤーなら理論的には毎回勝つことができると言うが、カジノ業界側はこれに反論している。

ペース・オー・マチックの代理人であるマット・ハバースティック弁護士によると、悪質業者を排除するために、同社や競合他社に適用できる基準の設定など、スキルが必要なゲームに対する規制強化を同社は訴えてきたという。だが、このゲームはギャンブルではない、と同氏は言う。

「カジノ業界は、まだ支配していない資金源を支配しようとしているのだ」

バージニア州では、2020年に州議会が商業カジノを認める法案を可決。賞金が現金で支払われる、スキルが必要とされる多くのゲームを違法とする法案も可決した。

同州でコンビニエンスストアなどを家族経営する元レースドライバー、ハーミー・サドラー氏は昨年、スキルが必要とされるゲームの禁止に法的異議を申し立てた。サドラー氏の会社は1980年代半ばから、ピンボールマシンなど多様な形態でこうしたゲームを提供してきたという。同氏によれば、大手カジノ業者がこの州に進出し、スロットマシンに似たゲームを標的にしたことで、初めて監視の目が向けられるようになった。

「もし政府が、中小企業を犠牲にしてカジノ産業による独占を推進するなら、それは自由市場システムを回避するものであり、公正な政府ではないと私は考える」とサドラー氏は述べた。

バージニア州の裁判所は、州がこの禁止令を施行することを禁じる仮処分を下している。同州司法長官事務所は、この訴訟についてコメントを避けた。

AGAで最高責任者を務めるビル・ミラー氏は、ラスベガスやアトランティックシティーなどの地方市場ではカジノ産業が好調だが、法執行機関や政府に対してこの問題を指摘することが重要だと述べた。AGAから司法省への書簡では国外のスポーツ賭博サイトの調査も要請している。

「みなさんの目の前に違法な市場が存在し、巨額の税収が失われている」とミラー氏は話した。

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